国家の崩壊 佐藤優


国家の崩壊

国家の崩壊


 「国家の罠」で、凄みを見せつけた著者がソビエト連邦の崩壊のプロセスについて分析したこの本は興味深いのですが、正直読み手の力不足というか知識不足というかで、消化不良に終わってしまいました。対談というスタイルをどうも僕があまり好まないせいもあるのでしょう。迫力が伝わってこないのです。ですが、興味をひかれることはたくさん出てくるので読むと良い本だと思います。
 1989年の東欧革命の当時、僕はフランスに住んでいました。その頃ドイツのアウトバーンを走っていると、一番遅いレーンを軽自動車のような東独製の「トラバント」が屋根いっぱいに荷物を積んで、黒い排気ガスを出しながら苦しそうに走っている姿を見かけるようになりました。黒い煙をはく2ストロークの乗用車なんて見たことなかったので、珍しくしげしげと眺めてたことを思い出します。東ドイツから脱出してきた人々だとは分かっていましたが、歴史が身近で動いている時に、僕はあまりその自覚がなかったように思います。メディアで伝えられるベルリンの壁崩壊よりも、ずっと身近に肌で感じられた東欧革命の姿だったんだよな。といまさら思っています。